ジム・ホールのギターとアンプ

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ジム・ホールのギターについて

ジム・ホールが使用してきたギターは次の通り。(2009/3/1 加筆:ES-175、弦、その他の機材)

ギブソン製 レス・ポール・カスタム (Les Paul Custom)

ジム・ホールがプロとして活動しはじめた1955年ごろから1957年ごろまでの短期間使用していたギターが、レス・ポール・カスタムで、色は黒だ。オリジナルのレス・ポール・カスタムはギター製造会社のギブソン社が1954年に発売し、1960年まで生産されたソリッド・エレクトリックギター(エレキギター)で、その色から通称ブラック・ビューティーと呼ばれることもある。ソリッドとはボディーが完全な板状のもので、アコースティックギターのような空洞がない形状あるいは単に細身のギターを指す。現在は後継や派生したコピーモデルが製造されている。

ジム・ホールがレス・ポールを持っていたことは、チコ・ハミルトンのアルバム「ブルー・サンズ」(1955年)「イン・ハイファイ」(1955年)のジャケットに写っており確認できる。写真ではギターの指板のポジションを示すインレイが1フレットにもあり、ブロック形状で、ピックガードが黒いことから、オリジナルのレス・ポール・カスタムであると判断できる。レス・ポール・カスタムについて、現在はロックギターやブルース、ポップスなどさまざまな分野で使用されており、ジャズのイメージがあまりないが、1950年代は選択の余地があまりなかったことを考慮するとジム・ホールが使っていても当然だったかもしれない。jazzLife誌(2008年11月号)のジム・ホールへのインタビューではレス・ポール・カスタムについて次の通り答えている。

ソリッド・ギターでリズムやグルーヴ感を表現するというのは無理だと感じた。何しろギターから直接ヴァイヴが伝わってこないのだから。(ジム・ホール)

彼自身が嫌いだという意味ではなく、それが向く人は迷わず弾くことを勧める、とも発言している。また、インタビューでは次のことも答えている

ジョン・ルイスらとレコーディングしたときに一度使ったことがある(ジム・ホール)

これはジョン・ルイスやチコ・ハミルトンらとの連名アルバム「2 Degrees East - 3 Degrees West(邦題:グランド・エンカウンター)」(1956年)のことを指していると思われる。また、初のソロ・アルバム「Jazz Guitar」(1957年)のジャケット裏側のスタジオ内の写真にも写っているが、このアルバムで実際に使用されているかは不明。

ギブソン製 ES-175

ジム・ホールのES-175(It's Nice To Be With Youより)
写真はIt's Nice To Be
With You(1969年)
のジャケット内側に
写っているES-175。

ES-175はジム・ホールが1957年ごろから1970年代中ごろまで使用していたギター。ES-175はギブソン社が1949年に発売したアーチトップ・エレクトリックギターでジャズ・ギターの代名詞的存在だ。現在でも後継製品が販売されている。ESは「Electric Spanish Cutaway Guitar」の頭文字からとっており、当時のカタログ表示価格が$175だったことから、このような型番がついた。アコースティックギターのように胴体の中身が空洞になっていながら、ピックアップを搭載し弦の振動を回路を経由してアンプ(スピーカー)で鳴らすことができることから、エレキギターの部類とされている。ギターマガジン誌(2008年3月号)の解説によるとジム・ホールがES-175を入手した経緯を次の通り解説している。

ジムはギタリストのハワード・ロバーツとのトレードで入手している。ジムは黒のレス・ポール・カスタムを、ハワードへ提供した。

(補足)ハワード・ロバーツ(Howard Roberts)はチコ・ハミルトンが始めてリーダー作を制作したトリオのアルバム(The Chico Hamilton Trio (1953年録音))の最初のギタリストで、アメリカの音楽学校MI(Institute College of Contemporary Music)の設立者の一人。日本に姉妹校MI Japanがある。

ジム・ホールが使用していたES-175は1ピックアップの初期のモデルで、シングルコイルのピックアップP-90を1個のみフロントに設置している。そのためピックアップのセレクタースイッチが無く、ボリュームコントロールのノブが1個、トーンコントロールのノブが1個となっている。さらに、後年になって指板が張り替えられた。オリジナルの指板はポジションの図柄が2つの菱形のホログラムが埋め込まれているが、長方形(ブロック形状)のホログラムが埋め込まれた形状のものに替えられた。【追記】P-90も他のピックアップに交換されているそうです。
【追記】(y様からの情報、引用しました ありがとうございます)

ジムホールの175にリプレースされたピックアップはギルド/ディアルモンドのHB1というハムバッカータイプです 
直流抵抗値で5.5k~6kオーム程のようでギブソンのハムバッカーやP90と比べると出力が抑え目であると推測できます
抵抗値は少し違うようですが現在はギルド社から復刻版が出ています

※筆者注
ギルド社のサイト。
Guild HB-1 Bridge Pickup - Nickel | Guild Guitars
 Bridge: Alnico 2 magnet, 7.10K resistance.フロント、ネック側
Guild HB-1 Bridge Pickup - Nickel | Guild Guitars Bridge: Alnico 2 magnet, 7.00K resistance.リア、ブリッジ側
現在はS-100 Polara in Cherry Red – Guild Guitarsというソリッドギターに使用されていますね。ジムが使っていた当時と仕様が違うとは思いますが、ピックアップのカバーの独特なデザインは、たしかにビデオなどで見かけるデザインと同じですね。

これに対し、現在よく見かけるES-175は、1953年に発売された2ピックアップの「ES-175D」を原型としたモデルだ。株式会社GIBSON GUITAR CORPORATION JAPAN のウェブサイトを見る限りは、現在は2ピックアップの製品を「ES-175」として販売している。ES-175Dは2ピックアップで、ハムバッッカー・ピックアップをフロントとリアの合計2つ搭載している。そしてピックアップを切り替えるトグル式セレクタースイッチ1 個、フロントとリアそれぞれ個別に対応するためのボリュームコント ロールのノブが2個、トーンコントロールのノブが2個搭載されている。

初期のES-175はジミー・ジェフリーとのトリオで制作したアルバム「Jimmy Giuffre 3」(1956年)や初のソロ・アルバム「Jazz Guitar」(1957年)に写っている。指板が替えられたES-175はアルバム「It's Nice To Be With You(邦題:イン・ベルリン)」(1969年)のジャケット内側と裏面の写真、そしてLP盤の「Live In Tokyo」(1976年)のジャケット内側の写真で確認できる。なお、写真はないがiazzLife誌(2008年11号)のインタビューでジムは「Concierto(邦題:アランフェス協奏曲)」(1975年)に使用したメインギターだったと答えている。

ダキスト製 ホロー・ボディ・モデル (D'Aquisto Hollow Body Electric)

ジム・ホールのギター ダキスト製 ホロー・ボディ・モデル(Commitmentジャケット裏側)
写真はCommitment(1976年)
のジャケット裏側に写っている
ダキストのギター。
※追記:2016/12/15
この写真はダキストの
フルアコ(エレキギター)
ではなくダキストの
アコースティック
ギターと思われます。
下記Circles(1981年)などの
写真がダキストのフルアコ。
Jim Hall Trio ; Circles

ダキスト製のアーチトップ・ギターはジム・ホールが1970年代後半から2003年ごろにかけて使用したギター。ジム・ホールのES-175のメンテナンスを担当していたギター工匠(ルシアー)の故ジミー・ダキスト(Jimmy D'aquisto/James L. D'Aquisto,1935-1995年)が提案し、ジム・ホールのために自作したギターだ。ジミー・ダキストは1965年からギター製作の名匠といわれたジョン・ディアンジェリコ(John D'Angelico)の元で修行を積み、高品質、高精度なギター製作の技術を身につけた。ディアンジェリコの後継者とも目されていたが結果的にディアンジェリコのブランドを受け継ぐことができず、独自にギター製作と販売を営み、アーチ・トップ・ギターのNewYorker(DQ-NY)シリーズなどを製作していた。その最中、ジム・ホールのための新たなギターを完成させた。完全なオーダーメイドのため、定まった製造型番はない。しかしその後ダキストはジム・ホールのために製作したギターを原型にして、新シリーズのアーチトップ・ギター「Jazz Line(ジャズライン、型番:誤 DQ-JL、正 DQ-JZ2016/7/28型番訂正)」シリーズを60数本製作したという。(ちなみにディアンジェリコはその後ターンテーブルの製造などで有名な日本の音響機器メーカーVestax社がブランドを譲渡され、製造販売している。)

ギターマガジン誌(2008年3月号)には1978年ごろ製作され1981年ごろまで実際に使用されたダキスト・ギターの写真と解説がある。解説によると、ピックアップはセイモア・ダンカン製とのこと。写真からわかる特徴は指板にブロック状のホログラム・インレイがあることと、ヘッドの形状が先端の中央がくりぬかれたような意匠になっていることだ。

ダキストのギターはアルバム「Commitment」(1976年)のジャケット裏面、「Circles」(1981年)、「Jim Hall And Friends,Vol.1 Live At Town Hall」「同Vol.2」のジャケット、「Jim hall & Pat Metheny」(1999年)のジャケット裏側,「glandslam」(2000年)のジャケットなどに写っている。なおアルバム「Live!」(1975年)のジャケットのジム・ホールの写実的な肖像画でジムがダキストのギターを抱えていることを確認できるが、指板のインレイの形状が前述のブロック状ではなく、分離したダイヤ形状のようなデザインになっている。これは絵画ゆえにデザインが変更されたのか、または別の固体が実際にそのデザインだったのかは不明。

ジムが言うにはダキストが最後に製作した作品というダキストのアコースティック・ギター(通称Avant-Garde、アバンギャルド)も所有している。色はナチュラル(白っぽい木目調)で、アルバム「Hemisphere」(2008年)のブックレットにも使用機材リストに挙げられており、ジムが抱えている写真が写っている。

ダキスト本人は故人のため現在はもう手に入れられない貴重なギターだ。しかし、詳しい事情は不明だが2001年、2004年に復刻モデルが製作され、輸入販売されたようだ
(2015/6/2追記修正)
2001年よりダキストのギター(ニューヨーカーやジャズライン)は日本の荒井貿易(ARIAブランドで知られる会社)が代理店契約を締結し、国内で製造販売していたとのこと。製造は寺田楽器らしいです。
販売店で話を聞きましたが2015年4月で荒井貿易のダキスト代理店契約が終了したとのこと。これにより国内生産のダキストギターは生産終了し、ダキスト製の弦(フラットワウンド弦)やピックも販売終了とのこと。ダキストのブランド自体が消滅したわけではないので今後は権利をもつところが生産するかどうかによります。

リンク(荒井貿易 生産終了品 ダキストの情報ページ):

サドウスキー製 ジム・ホール・シグネイチャー・モデル (Sadowsky Jim Hall Signature)

サドウスキー製のアーチトップ・ギターであるジム・ホール・シグネイチャー・モデルはジム・ホールが2004年から現在まで使用しているギター。1995年にダキストが59歳で永眠したため、ジムがダキストのギターのメンテナンスを心配していた。そこでジムのギター修理を15年以上にわたり経験し、ダキストについても熟知していたギター・ショップを営んでいたロジャー・サドウスキー(Roger Sadowsky)がギターの製作を提案し完成したのがジム・ホール・シグネイチャー・モデルだ。従来はソリッドギターの製作や修理などを主に手がけていたサドウスキーが初めて製作したアーチトップ・ギターでもある。ピックアップはサドウスキーがこのギターのためにピックアップメーカーのディマジオ社に特注したハムバッカー・ピックアップを搭載している。指板にはポジションを表示するインレイなどのデザインが無いことも特徴。このギターは国内でも輸入代理店などから購入できる。

アルバム「MagicMeeting」(2004年)、「Duologues」(2004年)の内ジャケットの写真ではサドウスキー製ギターを持っている様子が写っている。

ジム・ホールのギターの弦について

弦のゲージは通常、0.11~0.50のセット(0.11が1弦、単位はinch)で、種類はフラットワウンド弦を使用する。しかし時々、そのセットの通 常の3弦である0.22を、0.19のワウンド弦に交換している。ホーン楽器に似たサウンドを出せるから、との理由。一般的にロックギターは1弦に 0.09~0.10を使用し、アーチトップ・ギター(ジャズギター)は0.10以上を使用するので、とりわけジム・ホールは一般的な演奏者よりも太い弦を 使用しているといえる。弦が太いほど厚みのある音が出る。フラットワウンド弦は低音弦に使用される巻きつけた状態の弦の表面を平らに加工したもので、スラ イド時にノイズが発生しにくい特徴がある。ジャズギターではよく利用される弦だ。
(2015/6/2追記)
筆者はダキストのジャズラインを入手しましたが、購入時の弦はダダリオ製で1弦のゲージは0.12のセットでした。なのでジム・ホールが使っていたという0.11~のセットは太いというよりは普通か普通より細いのでしょうか・・・?

ジム・ホールのアンプについて

ジム・ホールが使用してきたアンプについては詳しい資料がないのだが、主に次の2つのようだ。

ギブソン(Gibson)製ギターアンプ GA-50

GA-50はジム・ホールが好なギターアンプの1つ。1948年から1955年ごろまで製造されたギター・アンプで、現在は製造されていないビンテージ・アンプ。現在ではまずお目にかかることが無いような骨董品級のアンプで、使おうと思っても状態のよいものがなかなかみつからないことから今は使用していないようだ。ジム・ホールがGA-50を使用している映像として、ソニー・ロリンズと共演したアルバム「The Bridge」(1962年)の曲を演奏したテレビ番組「Jazz Casual」の映像がある(VHS情報はこちらDVD情報はこちらYoutueの動画はこちら。The Bridgeの4:00前後、ジムの背後にGA-50の特徴的なスピーカーが映っている)。なお、iazzLife誌(2008年11号)のインタビューでは「Concierto(邦題:アランフェス協奏曲)」(1975年)に使用していたか問われて「たしかそうだ(ったと思う)」と答えている。

ポリトーン(Polytone)製ギターアンプ Mini-Brute

ポリトーン(Polytone)のギターアンプはジム・ホールが現在メインで使用しているギターアンプだ。ポリトーンは1968年に設立したギターアンプの製造会社で、小型ながら100Wの出力があり中低域の音が力強く出ることからジャズの分野で愛用する者が多いという。アンプが写真に残ることはあまり無いのだが、jazzLife誌(2008年12月号)にはダキストのアコースティック・ギターとともにポリトーンのアンプが写っている。また、ジム・ホール出演の教則ビデオ「STARLICKS SESSIONS with Jim Hall」(1993年、後にDVD化もされた)にもビデオ映像として写っている。なお、 アルバム「Hemisphere」(2008年)のブックレットに使用機材リストの記述で「modified Polytone amplifer」と表示されており、何らかの改造(modified)がされているようだ。

現在は、ジムが所有している初代の製品は生産されていなく、後継機種としてMINI-BRUTEⅡが販売されている。

その他の機材

その他の機材に次のものがある

  • 楽器用アンプ
    Walter Woods (型番不明) 参考サイト 
  • ギタープリアンプ
    Harry Kolbe GP-1

参考文献

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Re: ES-175

> ぉお!よくまとめました。
>
> ES-175末期には、指盤もカスタマイズされてますが
> PickUpも、交換されていたようです。
>
> アッチラ・ゾラーとの映像をお持ちであれば
> P-90が、他のPUにすえかえられているが確認できます。
情報ありがとうございます!

インディアン・サマー

kawagu様

今晩は!初めて御邪魔致します。
ジャズへ浸りだして?十年、中でもピアノとギターを好んで聴いて来ました。

過去ジム・ホールさんの優しい音色には、随分と癒された事在りましたが、昨年ブログ書き始め約一年経過後、氏の事記述しようと詳細捜索しコチラのサイトへ出会いました。

恐縮ながら、諸々不明点貴サイト参考させて頂きながら本日UPしました為、大変参考となりました旨、御礼と共にお知らせ致します。

Re: インディアン・サマー

take10n さん
はじめまして サイト拝見しました
実に思い入れのこもった内容ですばらしいと思います
わたくしなどまだまだ若輩者ですがよろしくおねがいします

No title

大変興味深い記事でした。

弦の太さに関してですが、「フルアコでジャズ」の場合、011は、細い方になる気がします。
20年も前の大学ジャズ研時代の情報&記憶ですが、「細い弦を、薄いピックで、丁寧に弾いて、まろやかなトーンを出す人」というイメージでした。

たしか、Pマルティーノなんかは極太で有名で、1弦が、016とも、018とも。

私は、013を張っていました。

今は、ソリッドに010です。
太い弦は、握力がついていかないです(苦笑)
久しぶりに、押し入れからフルアコを出したくなりました

Re: No title

こんにちは
コメントありがとうございます。
そうなんですね。何年も前にES-175Dを購入したのですが、ゲージは忘れましたが購入時の弦が太くてテンションもきつくて私には到底弾けず売り払ってしまいました。
ジャズラインはネックがちょっと短いのかそこまでテンションがきつくなくて012でも弾きやすいです
それでも私は普通のロックギターは009なので010でも最初は大変でした
パットマルティーノはあの超高速弾きをそんな太い弦で弾いているのですね。驚きです!

No title

ジムホールの175にリプレースされたピックアップはギルド/ディアルモンドのHB1というハムバッカータイプです

直流抵抗値で5.5k~6kオーム程のようでギブソンのハムバッカーやP90と比べると出力が抑え目であると推測できます

抵抗値は少し違うようですが現在はギルド社から復刻版が出ています

Re: No title

貴重な情報ありがとうございます。
1973年のアッティラ・ゾラーとジム・ホールのビデオを見ると、PUのカバーの独特な形状がよく見えて、あれは何だろうと思っていましたが、おっしゃる通りでびっくりです。
恐縮ですが記事に追記させていただきます。
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kawagu

Author:kawagu
江ノ島が好き。

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