Bill Evans & Jim Hall : Undercurrent (1962年)[CD]

Undercurrent

オススメ度

★★★★★

所感

ビル・エヴァンスのピアノとジム・ホールのギターのデュオ。説明不要の超有名、名盤ジャズアルバム。オススメ度を星5つとしましたが、好みで大きく印象が左右されるでしょう。これはわからん人にはわからん、合わない人には合わない、好きな人は好き、という聴く人を選ぶアルバムかと思い至った次第です。

たぶん、これを聴いてなんとも思わない方は「曲が静か過ぎる」「ドラムもベースもいない」「退屈」という感想を持たれるのではないでしょうか。そうです。このアルバムはほんとに静かです。速いテンポの曲はMy Funny Valentineくらいで、あとはほとんどバラード。静謐にして深淵な夜の河の底流-アンダーカレント-のようにひっそりとピアノとギターの音が流れてゆく、そんなアルバムです。ビル・エヴァンスとジム・ホールの音による静かな対話のような、途切れることない円滑なフレーズの受け渡しにを聞き続けていると、音の波間に漂うような感覚を覚えます。ぼーっと酒でものみながら聴いていればぐっすり眠れることうけあいです。そんなわけでアルファー波でも出てるんじゃないかと思うほど安眠には最適な楽曲たち。それが故、変化や展開を求める方にはちょっと退屈と思われるのでしょう。だがそれがいい。もう好みというしかないですね。

ジム・ホールのギターとしては聴き所が満載なわけですが、特筆すべきはやはりMy Funny Valentineでのバッキング。CDではテンポが異なる2テイクが収録されています。この曲では従来のギターのコード伴奏を覆した奏法が行われており、ジム本人は「ハーモナイズドベースライン」と呼んでいる奏法があります。

従来のギターの常識では指板を抑えるコードは1コードにつき1つの状態でコードを抑えて、コードが切り替わるときに当然左手を変化させていたわけです。つまり1小節が1コードならそれほど左手は変化させません。ところがジムは1小節が1コードでも、1拍ごとにフォームを変化させる弾き方で演奏しています。しかもけっこうはやいテンポで。主に低音部を変化させて、ベースでいえば四分音符で弾く「ウォーキングベース」にあたることをギターで行いつつ和音も1拍ごとに変化させています。#2.の2分11秒あたりが特徴的でよくわかります。今ではジャズギターでこうした弾き方はわりとポピュラーな弾き方かと思いますが、多くのギタリストに衝撃を与えて広く認知させたのはジム・ホールと言われています。そう、ロックギターのライトハンド(タッピング)を普及させたのがエドワード・ヴァンヘイレンだったように、ジム・ホールも地味でありながらギターの革新者だったのです。

ギターについてはバッキングのみならず、ソロでも優れた演奏を聴けます。テクニック面で何かと評価が低くなりがちなジムですが、しっかりとした技術があってこそ、技術云々を話題にさせないほど叙情的で表情豊かな演奏ができるのだと思います。

ちなみに、ギター教則ビデオStarlicks Master Sessions With Jim Hall(内部リンク)ではジムと共演者のラリー・ゴールディングスがギターとピアノのデュオの解説で、ビル・エヴァンスを引き合いに出して次の通り会話しています。

ジム「ギターでピアノの伴奏をすることについてちょっと説明しよう。では・・・君のコーラス部分をやってみよう。私は邪魔にならないようにコードを弾くから。(演奏) ラリーのバックで弾くとき、私はスティーブ(ベース)がいたら弾いていたはずのベースも自由に使える。だから完成したコードを弾くことが多い。ギターが何を弾いていたかわかってたよね。」
ラリー「邪魔しないようにしていた。あなたが言っていたように、お互いの引いている部分がダブらないようにしていた。あなたとビル・エヴァンスとの、あの有名なレコードの事が即座に心に浮かんだ。あのレコードを聴き込めば、あなたがいかに巧くバランスをとっていたかがよくわかる。ステレオのバランスを調整して聴いてみるとわかるのが、ビル・エヴァンスがソロをプレイしている時、彼は左手を全然使っていなかった。あなたがベース部分も含めてカバーできるから。弾きすぎると、曲が汚くなるばかりだ。」
ジム「そこが君を雇った理由だ(笑)。君はよく聴くからね」
ラリー「いまだに勉強中だよ」
ジム「君がいったようにビルが左手をぜんぜん使っていない長い部分があるんだ。不思議なバランスがある。マイ・ファニー・バレンタインの最初のコーラスの部分全部だっと思ったけど。」
ラリー「ええ、しばらくは気がつかなかった。音があまりにもふくらみがあるから」

この会話にもあるように、ジム・ホールは雑誌などのインタビューでもしばしば「相手の音をよく聞くことが大切だ」と答えています。ジム・ホールは自己中心的な演奏はせず、共演者との協調を重視しているがゆえ、このようなたった2つの楽器でのアルバムで、非常に密度の高い演奏を実現できたのではないでしょうか。ま、好き好きですがー。

追記 初CD化版とリマスター版(2014/7/26)
記事先頭にある、青みがかったジャケットは1988年にブルーノートレーベルから再発されたLPとCDのジャケットです(管理人所有ののCDをスキャンしたもの)。2002年に再発された24ビットリマスター版のCDではUnited ArtistsのオリジナルLPの白黒調のデザインが採用されました(白黒というよりはセピア調)。その後、何度か再発していると思いますが白黒調のデザインのままのようです。
1988年版と2002年版では収録曲の順番も違います。

詳細(1988年の初CD化版)

メディア
CD
アルバムタイトル(原題)
Undercurrent
アルバム名義
Bill Evans & Jim Hall
収録年
1962/4/24(#3,5,6),1962/5/14 (all others)
発売元,レーベル
Bluenote(Capitol Records,Inc.)*LP:United Artists Records UAJS 15003
所有盤
海外CD
CD発売元
Capitol Records,Inc.
CD発売日
1988
規格品番
CDP 7 90583 2
UPC
077779058327
定価
N/A

曲目(1988年の初CD化版、[*]はオリジナルLPにないボーナストラック)

  1. My Funny Valentine (Alternate Take) [*]
    作曲
    Richard Rodgers,Lorernz Hart
  2. My Funny Valentine
    作曲
    Richard Rodgers,Lorernz Hart
  3. I Hear A Rhapsody
    作曲
    Fragose,Baker,Gasparre
  4. Dream Gypsy
    作曲
    Veevers
  5. Stairway To The Stars [*]
    作曲
    Malnec,Signorelli,Parish
  6. I'm Getting Sentimental Over You [*]
    作曲
    Bassman,Washington
  7. Romain
    作曲
    Jim Hall
  8. Romain (Alternate Take) [*]
    作曲
    Jim Hall
  9. Skating In Central Park
    作曲
    John Lewis
  10. Darn That Dream
    作曲
    DeLange,Van Heusen

詳細(2002年の24ビット リマスター版CD)

メディア
CD
アルバムタイトル(原題)
Undercurrent
アルバム名義
Bill Evans & Jim Hall
収録年
1962/4/24(#3,5,6),1962/5/14 (all others)
発売元,レーベル
Bluenote(Capitol Records,Inc.)*LP:United Artists Records UAJS 15003
所有盤
海外CD
CD発売元
Capitol Records,Inc.
CD発売日
2002/7/16
規格品番
724353822828
UPC
724353822828
定価
N/A

曲目(2002年の24ビット リマスター版CD、[*]はオリジナルLPにないボーナストラック)

  1. My Funny Valentine
    作曲
    Richard Rodgers,Lorernz Hart
  2. I Hear A Rhapsody
    作曲
    Fragose,Baker,Gasparre
  3. Dream Gypsy
    作曲
    Veevers
  4. Romain
    作曲
    Jim Hall
  5. Skating In Central Park
    作曲
    John Lewis
  6. Darn That Dream
    作曲
    DeLange,Van Heusen
  7. Stairway To The Stars [*]
    作曲
    Malnec,Signorelli,Parish
  8. I'm Getting Sentimental Over You [*]
    作曲
    Bassman,Washington
  9. My Funny Valentine (Alternate Take) [*]
    作曲
    Richard Rodgers,Lorernz Hart
  10. Romain (Alternate Take) [*]
    作曲
    Jim Hall

演奏者、スタッフ

Bill Evans
Piano
Jim Hall
Guitar
Alan Douglas
Original sessions produced (for Oritinal LP,UAJS 15003)
Michael Cuscuna
Produced for releases (for Oritinal LP,UAJS 15003)
Bill Schwartan
Recording Engineer (for Oritinal LP,UAJS 15003)
Malcom Addey
Remixed to digital (for CD 1988,CDP 7 90583 2)
Ron McMaster
Remixed from the original three-tracks masters and mastered in 24-bit (for CD 2002,724353822828)
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テーマ : JAZZ
ジャンル : 音楽

tag : レーベル.BlueNote 演奏編成.デュオ・ピアノとギター 共演者.BillEvans

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